地主と借地人が「底地」 と 「借地権」 を 交換する場合の「固定資産の交換の特例」について
ご相談内容
私はA氏に100坪の土地を賃貸しています。
契約更新に伴い、A氏から 「土地の所有権を取得したいので、 借地権と底地を交換してほしい」との申し出がありました。
交換すると、A氏が60坪、私が40坪の完全所有権の土地をそれぞれ取得することになります (借地権割合60%のため)。
私としても貸し駐車場用地を探していたところだったので、交換に応じることにしました。
この場合、譲渡所得の計算はどのようになるのでしょうか?
一定の要件を満たす「資産の交換」は税務上、譲渡がなかったものとされます
原則として、底地の譲渡により所得(売却益)が生ずる場合は、税負担が生じます。
ただし、「固定資産の交換の特例」という制度があり、土地や建物などの固定資産を交換した場合で一定の要件を満たしているときは、税務上、その譲渡がなかったものとされます。
「固定資産の交換の特例」 の適用要件とは
特例の適用を受けるには、交換により譲渡する資産 (以下、「譲渡資産」)と取得する資産(以下、「取得資産」)が、以 下①~⑥の要件をすべて満たすことが必要です。
① 「譲渡資産」と「取得資産」は、いずれも固定資産。 不動産業者などが販売のために所有している土地など (棚卸資産) は対象外。
②「譲渡資産」と「取得資産」は、同じ種類の資産(土地と土地、建物と建物))
③ 「譲渡資産」は、1年以上所有していたもの。
④ 「取得資産」 は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでない。
⑤ 「取得資産」の用途を、交換直前の「譲渡資産」の用途と同じにする。
⑥「譲渡資産」と「取得資産」の時価の差額は、いずれか高いほうの価額の20%以内。
「借地権」 は 「土地」 とみなされる
今回のケースは、一つの土地の「底地の一部」と「借地 権の一部」を交換するものですが、 所得税法では、借地権 は「土地」に含まれるとされています。
したがって、底地と借地権の交換であっても、土地と土地との交換になります (要件②に該当)。 その他の要件にも当てはまれば、特例の適用を受けることが可能となります。
なお、交換する資産の時価の差額が20%以内である場合 (要件⑥に該当)、差額の調整として「交換差金」を受け取ったときは注意が必要です。
特例の適用を受けることができても「交換差金」の部分については譲渡所得が課税されます。 詳しくは税理士におたずねください。
Point!
・土地や建物などの固定資産を交換したとき、 売却益があっても譲渡所得税が課税されない「特例」がある
・「特例」を受けるための要件は6つ。そのすべてを満たす必要がある
■ひらかわ・しげる 1981年中央大学商学部卒業。 税理士 税理士 法人平川会計パートナーズ代表。 同事務所は不動産・相続税制のスペ シャリスト集団として高い評価を受けている。 HP は http://www.hirakawa-tax.co.jp/
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