給湯器の故障でお湯が出ない場合、 入居者から家賃の減額を求められるのか?
以前、オーナー様から、「給湯器が故障し交換となる場合、コロナ禍で納品に日数を要するので気を付けた方が良いと、賃貸アパートを所有する友人に聞いた。
入居者がお風呂に数日入れなかった場合、家賃減額を求められるのでしょうか?」とのお話がありました。
賃貸経営をするようになって日が浅く、何も分からず不安とのことでした。
例えばお湯が出なくなってしまった原因を調査した所、給湯器の経年劣化だった場合に、すぐに新品を手配したがコロナ禍で納品後交換作業まで10日かかり、その間入居者は銭湯に通わなければならず、不便を強いられたとします。
入居者から家賃の減額を求められた場合、このケースですと減額に応じなければなりません。
☆ポイント☆
・入居者に落ち度がないのに設備が故障したときは、 家賃減額の対象となります。
・減額の期間や割合は、「賃料減額ガイドライン」を目安に計算されるケースが多い です。
・オーナー様と入居者の協議によって、賃料の減額に代えてそれに相当する代替手段や代替品の提供等の対応がとられることも多いです。
それでは、オーナー様へご説明した内容をお伝えしていきます。
「設備の故障」も家賃減額の対象
古い民法では「賃借物の一部が (中略) 滅失したとき」、 借主はその割合に応じて家賃の減額を請求できる、 とされていました (611条1項)。
しかし、 2020年の民法改正により、減額の対象は「賃借物の一部が滅失その他の事由により”使用および収益をすることができなくなった"場合」と変更されました。
従来の 「滅失」に加えて、「使用できなくなった場合」も対象となりました。 入居者の責任ではなく設備が故障し、一部使用できなくなった場合、その分の家賃が減額されることを民法で明言しています。
貸室設備等の不具合による賃料減額ガイドライン
では実際に、「どのような不具合が対象となるのか」「いくら減額しなければならないのでしょうか」。
法律上の決まりはありませんが、 賃貸の現場では、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が作成・公表 している 「貸室設備等の不具合による賃料減額ガイド ライン」を活用しているケースが多いです。
このガイドラインには、 代表的な故障箇所ごとに「減額の割合」と「免責日数の目安」が掲載されています。
免責日数とは減額の対象とならない日数のことです。 修理業者の手配や部品の取り寄せにはある程度の日数がかかることから免責日数が設けられています。
賃料減額の計算方法
今回の例では、 給湯器の経年劣化による故障で10日間 入浴ができなくなりました。 ガイドラインによると「お風呂が使えない」場合の減額割合は10%、免責日数は3日です。
仮に月額家賃6万円の場合、日割家賃は2000円 (6万円÷30日)ですので、減額分は1日につき200円 (2000円× 10%) です。
給湯器の交換に要した日数は10日間ですが、 そのうち 免責日数3日を除外しますので、 対象となるのは7日間です。
したがって、家賃減額の目安は1400円(200円×7日) となります。
なお、ガイドラインは民間団体のものではありますが、 専門家により作成されているため、 裁判でも一定の目安 を示すものとして取り扱われる可能性が高いです。
代替手段や代替品の提供等の対応
一方で、オーナー様と入居者の協議によって、賃料の減額に代えてそれに相当する代替手段や代替品の提供等の対応がとられることも多いです。
円満な賃貸借関係を継続する観点からも、オーナー様と入居者の双方が誠意をもって柔軟に対応協議し解決することが、望ましいでしょう。
入居後のトラブルの未然防止策
賃貸住宅では給湯器等の設備に関して入居前に簡単な動作確認を行い、特に問題がない場合は設備等の交換が行われないケースがほとんどです。
給湯器等の設備不具合の要因は経年劣化に起因する事例が多いようです。
入居後のトラブルを未然に防止する観点で、設備等の補修・交換の実施時期の履歴を可能な限り把握するとともに、相当期間を経過している設備等については、入居前に設備等の交換をすることも検討してみましょう。
まとめ
入居者から家賃減額を求められた場合の入居者とのやりとり等の対応は、オーナー様にとって大変負担なことと思います。
法律的なことも含めて賃貸管理のプロである私どもが迅速に対応することは、オーナー様にとって大きなメリットとなるのではないでしょうか。
私どもはオーナー様の賃貸経営を全面的にサポート致します。
お問い合わせ
INQUIRY関連した記事を読む
- 2024/11/22
- 2024/11/08
- 2024/10/25
- 2024/10/10