退去立会いの際、床にタバコの焦げ跡を発見! 入居中に付いたものだと証明する方法は?
Q 先日、アパートの退去立会いをした時、フローリングの床にタバコの焦げ跡らしきキズが見つかりました。借主に指摘すると「入居時から付いていたものだ!」 と言われました。しかし、こんなキズはなかったはずです。 残念ながら当時の室 内写真はありませんが、私の言い分は通るでしょうか?
A 入居中についたキズであることを貸主側で証明しなければならないため、 厳しい結果が予想されます。
タバコの焦げ跡は 「借主の善管注意義務」に 反するが・・・・・・
建物の一室の貸し借りをする場合、借主は「善良な管理者としてその部屋を使用する注意義務」(善管注意義務) を負います。そのため、賃貸中に借主の故意や過失でつ いた居室のキズは、借主負担で修繕するのが原則です。
したがって、借主がフローリングの床をタバコで焦がしたのであれば、その箇所の修繕にかかる費用は、借主が負担することになります。
しかし、 借主から「入居時からキズがあった」 と費用負担を拒否された場合、 裁判では貸主側で「入居中に傷ついたこと」を証明しなければならないとされています。
この「証明」がなかなかの曲者で、貸主側で証拠を提出して、裁判官に「入居時にはそのキズがなかったであろう」と信じさせなければなりません。
写真を残していない場合の対処法は?
今回のご質問のように、入居前の写真がない場合には、入居前になされた原状回復工事やリフォーム工事の資料が残っていないかを確認してください。 それらの工事が行われていれば、「入居時にはタバコの焦げ跡のような キズはなかった」と言える可能性が高くなるからです。
これらの資料と併せて、キズの箇所や大きさから入居時にキズの存在に気づかないはずがなかったことや、入居前後での借主とのやりとりを記録したもの(メール等 を含む)などを根拠にして、「入居時にはキズがなかったこと」を証明していくことになるでしょう。
しかし、残念なことに実際の裁判では、これらの証拠を用意したとしても借主側に有利に進み、 貸主の言い分が認められる可能性は低いという結論が予想されます。
入居時に行いたい 「2つのトラブル防止策」
今後このようなトラブルを防ぐためには、① 入居前に 居室内の写真を撮影しておくとともに、② 入居時と退去 時の状態を一目で見比べることができる「チェックリス ト」を用意して、入居時に借主に記入してもらうことオススメします。
国土交通省の「原状回復にかかるガイドライン」 チェックリストのひな形が掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
Point!
・居室のキズが「入居前のもの」or「入居後のもの」を証明する責任は貸主側にある!
・ひとたび裁判になると貸主の立場は弱い。 入居時に確実な証拠を残しておこう!
がとう・ゆきひで 弁護士法人事務所 1972年生まれ。 名古屋 市出身 愛知学院大学法科大学院了 2010年弁護士登録。 愛知県弁護士 会所属。20年間、 不動産賃貸会社をしていたという異色の経歴を持ち 自らも8種 160戸の物件を保有、法律に精通した実践的なアド バイスに定評がある。 YouTubeで 「弁護士かとう」 チャンネルを運営中
※Owners 2022.3 加藤幸英の法律相談より
関連した記事を読む
- 2022/05/11
- 2022/05/03
- 2022/04/25
- 2022/04/20

オーナー様の賃貸経営サポート資産活用として店舗の誘致、出店計画・クリニック建築企画、不動産売買等、様々な仕事のご相談を頂き日々奮闘中!