置き配の荷物を盗まれた入居者から、家主の管理責任を問われているのですが…
Q アパートの住人から、「通信販売で商品を買い、置き配してもらったのに商品が盗まれてしまった。
簡単に空き巣に侵入されるなんて管理がなっていない。 責任を取ってほしい!」 という苦情が入りました。 どのように対応すればよいので しょうか?
A 原則として、家主が責任を負う必要はありませんが、 今後のために防犯対策を進めておくことをおすすめします。
コロナ禍で「置き配」需要が急増
近年、 通信販売の流通量が増大し、コロナ禍でさらに増加の一途をたどっています。 ここ最近では、配達員が荷受人と接触せず商品を玄関の前に置いておく、いわゆる「置き配」の利用も増えています。
では、ご質問のように置き配によってアパートの玄関前に配達されたはずの商品が紛失してしまった場合、 家主は、管理責任を追及されてしまうのでしょうか?
結論から申しますと、 家主が責任を取る必要のあるケースはほとんどないと考えます。
家主は責任を負わないのが原則だが…
過去の裁判例の中には、入居者が「ビルの管理に問題があったためにピッキングの被害に遭った」として、 家主に対して損害賠償を請求した事件もあります (東京地 裁平成14年8月26日判決)。
裁判所の判断は、「家主は建物や居室の貸主として、入居者に物件を使用させる義務等を負っているものの、入居者の財産を盗難などから保護しなければならないという義務までは当然に認められるものではない」というものでした。
ただしこの判決では、防犯について、 ① 特に家主の責任を重くするような特約が結ばれている場合や、② 以前から盗難被害が頻発していたにもかかわらず、家主が何も対策をしていないような場合には、管理責任が問われる余地を残しています。
管理責任が問われるケースとは?
この裁判例を踏まえると、例えば募集チラシに「防犯対策アパート!」などとうたい、防犯に力を入れていることをアピールしたり、警察から家主に対して置き配被害が報告され、注意を促されているような場合には、管理責任が認められる可能性もあります。 したがって、 安直に「防犯」を売りにすることは避けましょう。
また、入居者から盗難の苦情を受けたときは、鍵の交換や防犯カメラの設置など、 防犯対策を進めておくことをおすすめします。 併せて、契約書に置き配の荷物が紛失しても貸主は一切責任を負わない旨の文言を入れておくとよいでしょう。 なお、火災保険の特約には盗難に対応できる商品もありますので、万一入居者から盗難の被害が報告された場合には、保険代理店にご相談ください。
Point!
・原則として、家主には「入居者の財産を盗難などから 保護する義務」はない
・ケースによっては管理責任が問われることもある!
・今回の苦情をきっかけに防犯対策を進めておこう!
がとう・ゆきひで 弁護士法人事務所 1972年生まれ。 名古屋 市出身 愛知学院大学法科大学院了 2010年弁護士登録。 愛知県弁護士 会所属。20年間、 不動産賃貸会社をしていたという異色の経歴を持ち 自らも8種 160戸の物件を保有、法律に精通した実践的なアド バイスに定評がある。 YouTubeで 「弁護士かとう」 チャンネルを運営中
※Owners 2022.1 加藤幸英の法律相談より
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