初めての高齢者の入居を受け入れるのですが、契約にあたり準備すべきことはありますか?
Q 保有する単身者用マンションに70歳の男性から入居申し込みがありました。 OKしようと思いますが、 今まで高齢者を受け入れたことがないため少し不安で す。
万一、 入居中にお亡くなりになった場合に備えて、 どのような対策ができる でしょうか?
A 入居者が亡くなると、 賃貸借契約は相続人に引き継がれます。その点を踏まえて準備をしておくことが大切です。
賃貸借契約と残置物は相続人に引き継がれる
単身の入居者がお亡くなりになった場合、賃貸借契約は終了せず、相続人に引き継がれます。
そのため、家主が相続人に無断で室内の家財道具一式など (以下、残置物 といいます)を片付けると、後々、大きなトラブルに発展することがあります。
そこで、賃貸借契約の時点で入居者から、
① 将来、相続人になる親族の有無、
② 相続人がいる場合はその人の住所と連絡先、連絡手段などについて聞き取っておきま しょう。 万一の時、慌てずに済みます。
あわせて、 入居者に「捨ててもよい物」 と 「指定した人 (相続人)に渡してほしい物」 のリストを作ってもらうのも一案です。
入居者が親族に「後始末」 を委託する方法も
また、あらかじめ入居者自身が親族や居住支援法人などと委任契約を結び、 ① 賃貸借契約の解除、 ② 残置物の処分、 ③ 遺品の送付といった「後始末」を委託しておく方法もあります。
国土交通省のサイトには、この契約のひな型 (残置物の処理等に関するモデル契約条項)がありますので参考にしてください。
なお、家主が契約の相手方(受任者)になることは、入居者の利益が図られないおそれがあるため避けたほうがよいとされています。
相続の対象とならない 「終身建物賃貸借契約」
冒頭で「入居者の死後、賃貸借契約は相続人に引き継がれるため終了しない」と言いましたが、これには例外があります。
「終身建物賃貸借契約」です。
これは「入居者が生きている限り存続し、死亡や老人ホーム等への入所により終了する」という一代限りの契約で、相続の対象となりません。
利用するには、家主が事前に都道府県知事の認可を受けておく必要があります。
この契約は、高齢者の増加を受けて2014年にできたも のですが、これまでは認可の要件(建物の広さや手すりの設置など) がある上、提出書類も多く、一般の賃貸住宅ではあまり活用されてきませんでした。
しかし、2018年以降、 要件が緩和され、必要書類も少なくなりましたので、利 用を検討するのもよいかもしれません。
近年は、室内で亡くなった箇所に対する修理費用の保険もあります。 管理会社にご相談の上、ご検討ください。
Point!
・将来の相続人の氏名、連絡先などを聞いておこう
・残置物の処理について、「入居者」と「親族など」の間で委任契約を結んでもらう方法もある
・「終身建物賃貸借契約」なら、相続の対象とならない
がとう・ゆきひで 弁護士法人事務所 1972年生まれ。 名古屋 市出身 愛知学院大学法科大学院了 2010年弁護士登録。 愛知県弁護士 会所属。20年間、 不動産賃貸会社をしていたという異色の経歴を持ち 自らも8種 160戸の物件を保有、法律に精通した実践的なアド バイスに定評がある。 YouTubeで 「弁護士かとう」 チャンネルを運営中
※Owners 2021.12 加藤幸英の法律相談より
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