賃貸マンションの契約者(夫)が家出して、家賃が未払いになったら?
先日、サラリーマン大家として初めての賃貸経営を検討している方から、「未払い家賃」に関する相談がありました。
お話を聞いてみると、もし所有予定の賃貸マンションで、夫を借主、妻を同居人として賃貸借契約を結んでいる入居者の夫が妻を残して家出し、家賃が滞るようになった場合、妻に未払い家賃を請求できるのか、ケースによっては退去を求めることができるのかとのことです。
例えば賃貸マンションに残った妻が「生活が苦しい。お金がなくて家賃が払えない」と主張し、そのまま部屋に住み続けている場合、妻に未払家賃支払いをお願いするとともに、退去を促すことができるか、初めての賃貸経営をするにあたって不安要素を解消したいとのご相談でした。
万が一、裁判になった場合の判決ポイントである民法761条「日常家事債務」について、ご説明致しました。
「日常家事債務」とは?
夫婦が日常生活に必要な範囲で負担する債務のことを、「日常家事債務」といいます。
「日常家事債務」には、日用品や家具・家電の購入費用、食費、医療費、交際費、娯楽費、教育費など生活の中で発生する様々な債務が含まれます。
「日常家事債務の連帯責任」とは?
連帯責任なので、夫婦の他方は、夫婦の一方が負った債務を支払わなければなりません。
ご相談頂いた賃貸住宅の家賃は原則として、「日常家事債務」にあたります。
仮に裁判になった場合、「契約書にサインをしていない妻であっても連帯責任を負う」という判決が下される可能性は高いでしょう。
ご相談頂いたケースの場合は?
ご相談頂いたケースの賃貸借契約は、借主は夫のみであり、同居人の妻は契約書に署名捺印をしていません。
原則、同居人は保証人ではないので、オーナーは妻に対して未払家賃を請求できません。
民法761条には、「夫婦の一方が日常の家事 に関して第三者と契約して義務(日常家事債務)を負ったときには、他の一方も連帯してその責任を負う」、という規定があります。
この法律の日常家事債務の連帯責任の考え方に基 づくと、夫婦が共同生活を営む以上、妻は連帯して家賃を支払う責任を負っています。
例えば電気料金支払いのケースでは、電力会社との契約が夫名義であった場合、妻に電気料金を請求できないと非常に不合理な 結果になってしまうからです。
籍を入れていない内縁のカップル(事実婚)だった場合は?
民法761条は法律上の夫婦だけでなく、籍を入れていない事実婚 (内縁) のカップルにも適用 (準用) されるという考えが有力です。
今回のカップルが仮に未入籍であっても、夫婦同然の生活を送っているのであれば、妻に未払家賃を請求できる可能性があります。
退去を求める余地はあるのか?
夫婦に目ぼしい財産が見られない場合には、妻に「日常家事債務」の連帯責任について説明した上で、退居してもらうことを最優先にするのが良いでしょう。
今回のケースでは、まず、「夫婦は共に家賃を支払う義務を負っているので、このまま住み続ける場合は、あなたに対して未払家賃全額の支払を求めることになります」と伝えた上で、「月末までに退居してくれれば、未払家賃の請求はしません」といった条件を提示して、交渉する余地はあるかと思います。
まとめ
夫婦は共に家賃を支払う義務を負っているので、妻に未払い家賃の請求が可能であるとともに、退去を求めることも出来ます。
未払い家賃の請求や退去を求めることは、オーナー様にとって大変負担な事と思います。法律的な事も含めて賃貸管理のプロである私どもでサポートさせて頂くようご提案を致しました。
オーナー様のお役に立ちましたら幸いです。
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