入居者の方に家賃の値上げをお願いしたい
物価高で食料品などの生活必需品が次々と値上がりし、アパートを建てるために銀行から借りている融資の金利も引き上げられています。
そんな中、オーナー様から契約更新のタイミングで入居者に家賃の値上げをお願いしたいとご相談が。
問題なく同意してくださればよいが、同意が得られなかった場合はどうすれば良いか。そんな時の対応をまとめました。
契約内容の確認を
まずは契約内容の確認をして下さい。
賃貸借契約が普通借家契約であるか、 定期借家契約であるかによって対応が異なります。
普通借家契約の場合
普通借家契約の場合、当事者から契約終了の意思表示がない限り、同じ内容の契約が自動的に更新されていきます (借地借家法26条1項)。
そのため、入居者が同意しない限り家賃の値上げをすることはできません。
もっとも、更新時期での値上げに応じてくれる入居者も一定程度いますので、申し入れてみる価値はあるでしょう。
ただし、それをきっかけに入居者が退去してしまうリスクもありますので、 十分にご検討ください。
退去のリスクも
家賃を値上げするのはオーナー様の正当な権利ですが、入居者にとっては毎月の負担が増えることなので歓迎されません。
値上げ交渉をすると退去者が出る可能性もあります。
オーナー様にとって、空室は最大のリスクです。
家賃の値上げをきっかけに、「その家賃でもっと新しいところに住めるかも」「これまでの家賃と同じような金額で住めるところを探そう」と思う人もいます。
退去者が出ると次の入居者が見つかるまで空室期間が発生し、その間は家賃収入が入ってきません。
一気に家賃を上げると退去に繋がりやすいので、慎重さが求められます。
入居者へ家賃値上げ通知の注意点
・通知の時期は早め
入居者にも住み続けるか検討する時間が必要です。
実際に値上げを決めたら、とにかく早めに入居者に通知しましょう。
・書面で事前に告知
値上げの通知は口頭で行えますが、書面で告知しましょう。
大切な契約内容に関する告知なので、「言った言わない」というトラブルを避けることが出来ます。
入居者が同意してくれない場合は?
入居者が値上げに同意してくれず、現状の家賃では経営が難しい場合には、最終的に調停や裁判を起こして値上げを求めていくことになります。
その際「値上げの根拠」を説明できるようにしておく必要があります。
調停や裁判では、基本的に、「今の家賃がいつ決められたか?」 「それから何年経っているか?」 そして「その時から物価はどれくらい変動しているか?」 といった点が考慮され、最終的に値上げの可否、 および、値上げする場合にはその金額が決められます。
そこで、入居者へ申し入れをする前に、
① 契約が結ばれた年
②その年から現在までにどれくらい物価が上がったか
③近隣の家賃相場
の3点がわかる資料
④ 固定資産税の納付書
等を用意し、値上げの根拠を示して説明できるよう準備しておくことをおすすめします。
契約が定期借家契約の場合は値上げ可能?
定期借家契約の場合には自動更新がありません。
したがって、契約期間満了後、希望の家賃を提示して再契約を申し出ることができます。
入居者が同意しない場合は契約不成立となります。
なお、契約期間中は、家賃の増額請求を排除する特約のない限り、普通借家契約と同様に値上げを求めることも可能です (借地借家法38条 9項)。
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