新法創設!「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」のオーナーへの影響について・・・
はじめに・・・
賃貸経営において、物件の管理は極めて重要な役割があり、近年、管理内容の高度化やオーナー様の高齢化、相続などに伴う兼業化が進んでいます。
そのような中、業務の一部または全部を管理業者に委託するオーナー様が増加。
その数は今や8割を超えています(図1.参照)。
一方で、オーナー様と管理業者の間でトラブルが増加しています。
特に近年はサブリース契約を巡るトラブルが多く、社会問題となっています(表1.参照)。
しかしこれまで、管理業務や管理業者に関する法律はありませんでした。
そのような事態を踏まえ、2020年6月19日、賃貸管理業務に関する初めての法律「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が公布されました。
今回は、この法律が賃貸経営に及ぼす影響やオーナー様が取るべき対策について日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所の鈴木氏に解説をいただきました。
なぜ新法ができたのか?
不動産業を営むためには、国または都道府県から「宅地建物取引業」の免許を受けることが義務付けられています。
しかし、これまで賃貸住宅の管理業については許認可制度がなく、極端に言えば誰でも営業することが可能でした。
そのため、非常に良心的な管理を行う業者がある一方で、不十分なところもあるという状態でした。
管理を巡るトラブルの背景にはこのような事情があったのです。
管理業務の質を保つために・・・
今回の法律(以下、新法と言います)は賃貸管理業界の底上げと管理業務の質を確保するために創設されました。
新法は大きく分けて、2つの柱があります。
具体的に見ていきましょう。
1.「サブリース契約」の適正化
1つめの柱は、オーナー様とサブリース業者間の賃貸借契約(以下、サブリース契約と言います)の適正化に関する法律です。
サブリース契約を巡るトラブル防止を目的として制定されました。
国は2029年度までにトラブル件数を3分の1に減らす目標を掲げています(2020年12月18日施行予定)。
何が問題だったのか?
サブリース契約におけるトラブルの多くは、サブリース業者の説明不足などにより契約内容がオーナー様に正確に伝わっていないことが原因です。
国土交通省の調査によると、サブリース契約締結時、「将来の家賃変動の条件」「空室のリスク」「修繕工事費用」などについて説明を受けたオーナー様は4〜6割程度にとどまっています(表2.参照)。
そのため、実際には賃料減額のリスクがあるにもかかわらず、「30年間、同じ家賃が入ってくる」などと誤認しているケースが少なくありませんでした。
オーナー様からの契約解除は困難
しかし、オーナー様が賃貸人、サブリース業者が賃借人となるため、借地借家法によりオーナー様から契約を解除することは困難という現状があります。
「正確で丁寧な説明」が義務化!
そこで、新法ではサブリース業者およびサブリース契約を勧誘した者(物件の建築会社、金融機関など)に対して、次の義務を課しました。
誇大広告の禁止
オーナー様に支払う家賃、契約解除の可能性や要件、物件の管理方法などに関して、「著しく事実と違う表示」「実際より著しく優良な表示」「有利だと誤認させるような表示」が禁止となりました。
不当な勧誘等の禁止
オーナー様を勧誘する際、契約の判断に関わる事柄について
① 故意に事実を告げない(例:「家賃から維持費を差し引く」「2年ごとに家賃額の見直しがある」などを告げない)
② 事実でないことを告げる(例:「家賃額はずっと変わらない」など)
の2点が禁止となりました。
契約締結前の重要事項説明
契約前に必ず、家賃や契約期間などの重要事項について書面を交付し、口頭でも説明することが必須となりました。
事前に内容の精査が可能に!
従来、「そんなリスクは聞いていない!」というオーナー様と、「説明したはず」というサブリース業者の間でトラブルが多く見られました。
今後は事前に重要事項説明書を取り寄せて、内容を精査したうえで契約することにより、トラブルを回避できます。
精査する際は見落としなどを防ぐためにも、信頼できる知人やお付き合いのある不動産会社の担当者などに一緒に見てもらうことをおすすめします。
新法の適用時期に注意!
新法の適用対象となるのは、施行日(2020年12月18日の予定)以降に締結された契約です。
これからサブリース契約を予定されている方は、できるだけ新法施行後に行うことをおすすめします。
施行前に締結した場合は対象外となりますが、トラブル防止のために契約内容を確認し、不明点やあいまいな点があれば解消しておきましょう。
なお、サブリース契約に関するガイドラインが施行前に出る予定です。
※サブリース契約に関するガイドラインについては国土交通省ホームページ“「サブリース事業適正化ガイドラインの策定 ~法の規制対象を事例等で明確化しました~」”をご確認ください。
2.「賃貸管理業者」登録の義務化
2つめの柱は、「賃貸管理業者に対する登録制度」です。
以前から任意の登録制度はありましたが、あまり浸透していませんでした。
新法では管理戸数200戸以上の業者に対して、国土交通省への登録を義務化しました(2021年6月18日施行予定)。
業務の内容が明文化
登録の義務化にあたり、これまで法的に明確な規定がなかった「賃貸管理業者」について、初めて明文化されました。
管理業務には、①物件の維持保全、②金銭管理(家賃、敷金、共益費など)があります。
新法では①および②、または①のみを行う業者を「賃貸管理業者」とし、②のみの場合は該当しないとしました。
4つの義務
賃貸住宅の良好な居住環境を確保するとともに、不良業者をなくすために、「賃貸管理業者」には次の4つが義務付けられました。
違反した場合、その程度に応じて罰則が科されます。
①業務管理者の配置
賃貸管理の専門知識を持つ有資格者(一定の講習を受けた宅地建物取引士または賃貸不動産経営管理士)を事務所ごとに1名以上配置すること。
②管理受託契約締結前の重要事項説明
受託する業務内容・実施方法を具体的に説明し、書面でも交付すること。
③財産の分別管理
管理を委託された金銭(家賃など)を自社の財産と分別して管理すること。
④オーナーへの定期報告
管理業務の実施状況について、オーナー様に定期的に報告すること。
受託内容が書面に明記される
これまでは、オーナー様が管理業者に対して口頭で管理業務を依頼するケースもあったかもしれません。
新法施行後は、管理受託契約は書面で行われ、事前に交付される重要事項説明書にオーナー様が委託する管理業務の内容などが明記されるようになります。
管理業者がどこまで対応してくれるのかを把握しておくことが大切です。
不明点などがある場合には、遠慮なく確認しましょう。
管理に高い専門性が求められる時代に!
賃貸住宅の管理業務の範囲は多岐にわたり、複雑化しています。
それに伴い、賃貸管理業務に高い専門性が求められる時代になっています。
今回の新法でサブリースを含む賃貸管理業務を「見える化」し、賃貸管理業者の位置づけを法的に確立したことの意味は大きいといえます。
新法がきっかけとなり、オーナー様と管理業者が事業パートナーとしてより強力にタッグを組み、賃貸経営を発展させていかれることを期待してやみません。
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