時価に満たない価額で不動産を売却・・・ 譲渡所得の計算は? 安く購入できても贈与税が心配?
大家さん・地主さんのための情報誌「Owners オーナーズ」2020年8月号より、税理士 西野道之助 先生のコラム「ここまで差がつく 生きた税務を考える」をご紹介いたします。
私の所有する時価 2,500万円の土地を 1,000万円で甥に売却することに!
Q.私の甥が結婚することになり、マイホームを建築したいので、所有する土地を譲ってもらえないか?
との相談がありました。
この土地は私が20年前に1,500万円で購入したもので、現在の時価は2,500万円になります。
しかし今回、甥のために1,000万円で売却してもいいと考えています。
この場合、私の譲渡所得の計算は、実際の収入金額1,000万円と時価2,500万円のどちらで行えばよいのでしょうか?
また、時価より安く購入した甥には、贈与税が課税されるのでしょうか?
西野道之助 税理士の回答・・・
1.個人に低額譲渡した場合の譲渡所得は、「実際の収入金額」をもとに計算します。
2.低額で購入した個人には、「時価と購入価格の差額」に対して贈与税が課税されます。
譲渡所得の計算はどうなるの?
個人に低額譲渡した時の譲渡所得の計算についてご説明いたします。
所得税の規定では、時価の2分の1未満の価額で不動産の譲渡(低額譲渡)が行われた場合、実際の時価 (2,500万円)で譲渡があったものとみなされる、「みなし譲渡課税」があります。
ただし、この規定は、法人に対する譲渡や贈与にのみ適用されるものです。
したがって、ご質問のように個人である甥御さんに対して低額譲渡を行った場合には、
実際の収入金額1,000万円をもとに通常の譲渡所得の計算を行えばよいことになります。
500万円の譲渡損失が発生するのでは?
20年前に1,500万円で購入した土地を1,000万円で売却するため、500万円の譲渡損失が発生します。
しかし、時価の2分の1未満の低額譲渡によって発生した損失は、なかったものとして取り扱われます。
今回の売却価額1,000万円は、実際の時価2,500万円の2分の1に満たないため、もし、あなたが同じ年内に他の不動産も売却して譲渡所得(利益)が生じたとしても、譲渡損失500万円を通算することはできませんので注意が必要です。
甥の贈与税はどうなるの?
購入価額と時価の差額 1,500万円に贈与税が課税されます。
著しく低い価額で財産を譲り受けた場合には、その購入価額1,000万円と時価2,500万円との差額1,500万円を、売主であるあなたから「贈与により取得したもの」とみなされ、贈与税が課税されます。
贈与税の場合は、譲渡価額が時価の2分の1未満であるか否かにかかわらず、課税の対象とされます。
したがって、たとえ2,000万円で購入したとしても、時価との差額500万円に対して贈与税が課税されることになります。
当初の取得価額(1,500万円)は購入者が引き継ぐことになる
今回のように時価の2分の1未満の低額譲渡が行われた場合は、その購入者である甥御さんが、売主であるあなたの土地の取得価額1,500万円を引き継ぐことになります。
将来、甥御さんがこの土地を売却する際の取得価額の計算は、実際の購入価額の1,000万円ではなく、1,500万円となりますのでご注意ください。
◆おさらい◆
1.個人に低額譲渡した場合の譲渡所得は、「実際の収入金額」をもとに計算します。
2.低額で購入した個人には、「時価と購入価格の差額」に対して贈与税が課税されます。
詳細につきましては賃貸オーナー様の顧問税理士へおたずねください。
最後に・・・
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