2020年度 【税制改正】と【新型コロナ税制措置】のポイント について・・・
はじめに・・・賃貸オーナー様への影響と対策〜改正のポイントにつきまして
2020年度税制改正が3月7日に成立しました。
その約1ヶ月後には新型コロナウイルス関連の緊急税制措置法がスピード施行。
賃貸経営に影響を及ぼす改正がいくつか行われました。
賃貸オーナー様が知っておくべき4つの改正内容と新型コロナウイルス関連の3つの税制措置について、税理士の北岡先生に解説いただいています。
改正の内容について以下にまとめてみました。
【税制改正】空き地の譲渡を促進する新制度の創設
長期間利用されていない空き地や空き家など、個人が都市計画区域内の低未利用土地等を譲渡した場合、譲渡益から100万円を控除できる制度が創設されました。(低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除)
<適用要件>
①その年の1月1日時点で所有期間が5年超
②譲渡価額が500万円以下(土地の上の建物等を含む)。
これまでは価格が低い土地は、売却時のコストを差し引くと利益が出ないため放置されるケースが有りましたが、本特例を活用して譲渡することも一案です。
適用は2020年7月1日から2022年12月31日までの譲渡です。
なお、制度の内容と手続きの流れにつきましては“仙台市「都市整備局住宅政策課」のホームページ「低未利用土地等の譲渡に係る税の特別控除について」”にも掲載されていますのでご確認ください。
【税制改正】「所有者不明土地等」への課税を強化!
所有者が死亡しているのに相続登記がされていない、いわゆる「所有者不明の土地等」が大変多くなっています。そのため今回の改正では、それらの土地への固定資産課税が次のように強化されました。
「所有者不明の土地等」は → 段階を踏んで現所有者に課税
①登記簿上の所有者が死亡している場合、市町村長は条例の定めるところにより、現所有者に対して氏名、住所など固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができるようになりました。
(2020年4月1日以後の条例施行後に適用)
②その後、一定の調査を尽くしても所有者が一人も明らかにならない場合、市町村は現使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、課税できることとなりました。
(2021年度以後の固定資産税について適用)
<対策のポイント>
現所有者が申告しない場合は罰則規定が設けられます。該当する土地等があれば早急な対応が必要です。
なお、“仙台法務局「民事行政部不動産登記部門」のホームページでも「表題部所有者不明土地の所有者等の探索について」"のアナウンスと、当該表題部所有者不明土地に関する情報提供の協力依頼について掲載がされていますのでご確認ください。
【税制改正】消費税の「仕入税額控除」の制限
居住用賃貸建物(アパートやマンションなど)の取得時に支払った消費税については、仕入税額控除の対象から除外されることになりました。
●店舗部分などは改正の対象外
ただし、居住用賃貸建物のうち住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分(店舗など)の消費税については、引き続き控除の対象となります。
●建物取得後に用途を転用した場合
居住用賃貸建物を取得後、一部を店舗などに転用するケースもあると思います。
その場合、転用した時期が「建物取得日の属する課税期間の初日」以後、「3年を経過する日の属する課税期間の末日」までの場合は、一定金額が仕入税額控除に加算されることになります(下記の図1参照)。
(適用)
2020年10月1日以後に居住用賃貸建物を取得した場合に適用。
<対策のポイント>
本来、居住用賃貸建物を取得したときにかかる消費税は、家賃収入(非課税売上)に対応する仕入税額であるため、仕入税額控除ができません。
しかし、これまでは金などの投資商品を繰り返し売買して作為的に課税売上を作り、そこから居住用賃貸建物にかかる消費税の全部または一部を仕入税額控除して還付を受けることが可能でした。今回の改正により、この消費税還付スキームが封じられることになりました。
なお、国税庁ホームページで「「消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)」の掲載について」が公表されていますのでご確認ください。
【税制改正】海外不動産投資に関する改正
海外不動産投資をしている人に関わる改正も行われています。
国外中古建物の賃貸で不動産所得に損失が生じたとき、これまでと異なり減価償却費に相当する金額は「生じなかったもの」とみなされることになりました。
これにより、他の所得との損益通算が制限され、国外中古建物の購入による節税手法が使えなくなります。
(適用)
2021年以後の損失に適用。
<対策のポイント>
欧米諸国は日本と異なり中古住宅の流動性が高いため、中古物件でも価格が下がりにくいと言われています。
また、日本の税法では法定耐用年数の全部を過ぎた建物は、その耐用年数の2割での償却が可能です。
これらの特性を生かした従来の節税手法が完全に封じられることになり、2020年中に売却する方も増えるかと思われます。
【新型コロナ税制措置】賃料減免による損失・・・全額損金に!
事業収入が減少した借主(テナント)に対して賃料を減免したとき、一定の要件を満たせば損失分を全額損金とすることができます(表1参照)。
通常時は、賃料の減額に合理的な理由がなければ、減額分は借主に寄附金を支出したものとして税務上取り扱われますが、下記表1の要件に当てはまる場合は合理的な理由になるということです。
(適用)
借主が通常の営業活動を再開するための復旧期間内(期間の定めはない)。
<対策のポイント>
賃料減額の理由や目的を書面で明らかにしておくことが必須となります。
表1の内容を満たす覚書や借主への通知などを作成しておきましょう。
【新型コロナ税制措置】無担保、延滞税なしで納税を猶予
事業収入に相当の減少があった全事業者について、国税・地方税および社会保険料の納付を無担保かつ延滞税等なしで、1年間猶予する特例が設けられました(表2参照)。
この特例は、法人税、消費税、所得税および固定資産税など、ほぼすべての税が対象となります。
●申請期限に注意!
特例の適用を受けるには
①施行後2ヶ月以内(2020年6月末)、または、
②各税金の納期限のいずれか遅い日までに、税務署に申請する必要があります。
適用)
2020年2月1日から2021年1月31日までに、納期限が到来する税金。
<対策のポイント>
現行制度にも納税猶予はありますが、今回大きく違うのは、延滞税等がないという点です。
適用を受けるには、「収入5%以上減」の証明が必須ですので、しっかりとした収入管理が重要です。
なお、猶予期間の終了後は納付(分納も可能)する必要がありますので、よく考えて利用しましょう。
【新型コロナ税制措置】不動産賃貸業にも固定資産税の減免
事業収入が前年と比較して大幅に減少した中小企業や個人事業者を対象に、2021年度の固定資産税が減免されることになりました。全業種が対象となり、もちろん不動産賃貸業にも適用されます。
●「大幅な収入減少」の判断基準は?
2020年2月から10月のうち連続する3ヶ月間の収入を、前年の同時期と比較して、減免率が決定されます(表3参照)。
●土地にかかる税金は対象外
減免されるのは建物や設備等の固定資産税、都市計画税です。
土地については対象外ですのでご注意ください。
●確認書の受領が必要
減免を受けるには、必要書類を用意した上で、2020年中に「認定経営革新等支援機関」から確認書を発行してもらうことが必要です。
この機関は全国にあり、会計事務所が兼務していることが多いので、顧問稅理士にご確認ください。
適用)
2021年1月1日から1月末までの間に市区町村に申告。
<対策のポイント>
前年の収入と比較できるよう、しっかりと毎月の収入管理をしておきましょう。
なお、賃料の減額要請に応じたことによって収入が減少している場合も、この減免措置に該当します。
※新型コロナウイスル関連の各種支援の施策については経済産業省ホームページ“「経済産業省の支援策(2020年7月28日時点)」新型コロナウイルス(COVID-19)による企業への影響を緩和し、企業を支援するための施策をご案内します。”をご確認ください。
その他の“法改正”や“ 新型コロナウイルス感染症”に関連するブログについて
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最後に・・・
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