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2021年08月27日
不動産コラム

新「住生活基本計画」のこと

今後10年の「住宅政策の新たな計画」とは?

住宅政策の基軸となる「住生活基本計画」 先頃、5年に一度の見直しが行われ、閣議決定された (2021年3月19日) 計画の概要と賃貸経営への影響について、住宅政策に詳しい佐藤氏に伺う。



「住生活基本計画」とは、我が国が抱える 「住生活の現状」と「今後10年の課題」見据え、それらに対応するための「施策の基本方針」を示すものです。

住生活基本法に基づいて5年ごとに策定されており、 この春、その最新計画が閣議決定されま した(2021年3月19日)。

賃貸経営は先の長い、長期的視野が必 要な投資です。日々の空室対策や管理を行う上で、国の住宅政策の方向性を知っておくことが非常に大切だと考えます。

そこで今回は、その概要と賃貸経営への影響についてお話しいたします。今後の経 営方針を考える足がかりにしていただければ幸いです。

脱炭素社会に向けて

戦後の日本の住宅政 は、量的な充足を目的 とした「住宅の供給」計画からスタートしまし た。しかし、2008年を境に人口減少に転じ ることが確実になると、「住生活の質」を重視した政策に舵を切りまし た。

具体的には、新築重視の「スクラップ&ビルド」から、既存住宅を補修・改修して末永く活用する「リユース・リフォー ム」への転換です。

2000年以降は、そこに環境問題が加わりました。国土交通省はSDGs(持続可能な開発目標)の達成やカーボンニュートラルの実現に向けた取り 組みとして、2021年、「脱炭素社会に 向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を立ち上げ、国家レベルで議論が始まっています。

このような中で今回の計画は厳定され ました。

6つの課題

今回の計画では、住生活を取り巻く現状を踏まえ、次のとおり今後10年で特に重視すべき6つの課題」を提示しています。

 

1.高齢者世帯 生活保護世帯の増加 

「子育て世帯数が減少する一方で、高齢者世帯は増加しています。この増加は今後、「緩やかに」続く見込みです。 

また、生活保護世帯や住宅扶助世も増加傾向にあります。

 

2.CO2削減

地球温暖化防止策として、CO2の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラ ル」が世界的な潮流になっています。

日本は2050年の達成を目指しているため、 住宅や建築工事などから排出される CO2の減が急務となっています。


 3.良質な住宅ストックの形成

耐震基準満たしていない住宅や、省エネ基準を達成していない住宅への対策、空家問題(有効活用、管理不全の空き家の除去など)が課題です。

 

4.住まい方の多様化
働き方改革・コロナ禍を機に住まい方が多様化。在宅テレワーク、郊外居住、二点居住などへの関心や実践の動きが高まっ ています。

 

5.暮らしのデジタル化
IT技術の進歩とコロナ禍により暮らしのデジタル化が加速。リモートによる 部屋探しや契約手続きのデジタル化などのニーズも高まっています。

 

6.災害への備え
自然災害の頻発・甚大化により、住まい選びでは、周辺環境(災害時の安全性 福祉施設の整備など)がより重視され るようになっています。

 

以上の課題解決に向けて、8つの目標を 設定し、政策を推進していくこととしてい ます。具体的に見てみましょう。

国の政策目標とは?

●「社会環境の変化」への対応

1.新たな日常、DXの推進

2.安全な住宅・住宅地の形成

第4次産業革命といわれるデジタル技産業革命といわれるデジタル術の革新が進む中、それらを上手に生活に取り込むための施策、および、頻発する自然災害に対する安全な住宅・住宅地づくりを掲げています。

 

●「居住者・コミュニティ」への配慮


3.子どもを産み育てやすい住まいづくり

4.高齢者が安心して暮らせるコミュニティの形成(孤独・孤立対策)

5.住宅セーフティネットの整備


前々回(2011年)の計画までは高齢者対策に重点が置かれてきましたが、徐々に共働き・子育て世帯や高齢者、障害者、外国人など多様な世帯への対策にシフトしています。

これらの目標の達成に向けて、賃貸住宅の性能向上や計画修繕についても言及されました。

良質な存住宅のや管理の環境整備、住宅の長寿命化に向けた対策、空き家に関する
問題の解決に向けた強策が打ち出される予定です。

 

●「住宅ストック・産業」への施策

 

6.既存住宅の性能向上による、柔軟な住み替えの仕組みづくり

7.空き家の管理・除却・利用

8.住生活産業の発展

良質な既存住宅の流通や管理の環境整備、住宅の長寿命化に向けた対策、空き家に関する諸問題の解決に向けた施策が打ち出される予定です。

賃貸住宅への影響

以上を踏まえ、賃貸経営への影響、オーナー様に注目していただきたいポイントについてお話しします。

長期使用できる賃貸住宅づくり!

今回の計画では、子どもを産み育てやすい住まいの実現に向けて、「長期使用で
きる良質な賃貸住宅の形成」とそのための「市場の整備」が目標とされました。

具体的には、一定の断熱・遮音対策が講じられた民間賃貸住宅の割合を2030年までに全体の20%に引き上げることなどを目指しています(表1参照)。

工事用の補助制度など、国や地方自治体からのサポートが期待されるところです。


 

高齢者が安心できる住宅性能

賃貸住宅を利用する高齢者は年々増えています。国は一定のバリアフリーおよび断熱性能をもつ住宅の割合を2030年までに全体の25%に引き上げることを目標に掲げています。(表1参照)

その具体策の一つとして、バリアフリー性能やヒートショック対策を備えた住宅の整備、リフォームを促進しています。

今後、物件のリフォームを検討する際は、一考の価値があるといえます。

マンションの長寿命化にむけて

近年、老朽化マンションが問題になっています。それを反映して盛り込まれたのが、「管理の適正化・長寿命化、再生の円滑化を推進する」という施策です。

これは分譲・賃貸共通の課題といえます。

賃貸住宅にも「高齢化問題」

前回(2016年)の計画では、地方にある実家の空き家問題(主に戸建て)がクローズアップされ、その結果、不動産鑑定基準の変更やリバースモーゲージ制度の整備などが行われ始めました。 

そこから5年が経過し、空き家問題は地方・郊外から都市部へ、戸建てから集合住宅へと視点がシフトしつつあります。

背景には、集合住宅の「高給化」「老朽化」があります。

 

●築50年以上の賃貸住宅が3.5倍に! 

国土交通省の調査によると、現在、日本の総住宅数に占める賃貸住宅の割合は35.5%、うちアパートやマンションなど集合住宅は30.3%と大部分を占めています。

また、築30年以上の賃貸住宅の戸数は今後20年間で約1.5倍に増加すると推測されています。その中でも特に、築50年以上の貸家は約3.5倍、築40年以上は約2倍になる見込みです(図1参照)。

ますます管理が重要な時代に!

そのような中、管理の重要性はますますクローズアップされていくでしょう。


社会経済情勢の変化を受けて、入居者ニーズも多様化しています。

老朽化する賃貸住宅が増加する一方で、築年数は古くても。「高齢者向け住宅」や「シェアハウス」に転用したり、「DIY賃貸住宅」「ワークススペース付き賃貸住宅」などとして貸し出し、新たなニーズの獲得に成功している物件もあります。

今後、時代の動きに対応できない住宅は陳腐化し、空室率の上昇や家賃の引き下げを強いられる可能性が高くなっていくと推測されます。

まずは、ご自身の物件や賃貸経営の状況を的確に把握することから始めましょう。

そして、適切な修繕の実施を含め、今後の経営をどのように行っていくか主体的に検討していくことが大切だと思います。

 


株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤益弘

ライフプランFP /FP


 

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